top of page

ブラームス 小話 その3

  • T.S(Ensemble”Eroica”)
  • 2019年6月11日
  • 読了時間: 2分

ブラ1にまつわる小話 第三回目 リンフォルツァンドの謎


 今回は、少しクララから離れます。実は見落としている方が多いとおもいますが、二楽章では普段見られない強弱記号が二箇所現れる事をご存知でしょうか。

 12小節の弦楽器、25小節の弦楽器に、sf (スフォルツァンド)とは異なる rf という強弱記号が見られます。



これは リンフォルツァンド (=rinforzando)という記号です。

 イタリア語を直訳すると、リンフォルツァーレ(=rinforzare, リンフォルツァンドの動名詞) は「補強する、勢いを増す」となります。構造は ri + inforzare となるので 「再び強調する」「念押しして強調する」という感じなのだと思います。( ri は英語の re と同じ使い方です)

似たような記号では、sf スフォルツァンド、fz フォルツァンド、rf リンフォルツァンドが有りますが、リンフォルツァンドを意識して見た事が有る方、意識して演奏しているかたは、本当にごく少数かと思います。The New Harvard Dictionary of Music という有名な音楽辞典が有りますが、その中では学術的に同義と見做されています。



 学術的にはそうであっても、他の場所では sf となっているのに、ある特定の場所だけ rf と記載するのには、作曲家の意図が必ず隠されている筈です。

 ブラームスの交響曲では、rfは第2番のフィナーレ(188小節)と第3番の1楽章(201小節)にのみ使用されているだけです。ベートーヴェンは後期の弦楽四重奏曲でいくつか使用されているケースが見受けられます。ベートーヴェンを最も敬愛していたブラームスの事ですから、この箇所に同様な室内楽的響きを求めていたのでは無いでしょうか。


 さて、件の12小節と25小節の細かな解釈については、同じ後半の旋律(79小節、98小節)ではクレッシェンドからフォルテ、フォルテからディミニュエンドとなっており、rf は見当たりません。fz、sfz が その音のみを強調するものであれば、rfz はそれに対してある範囲・空間的な要素があると考えられるのでは無いでしょうか。すると頭からアクセントをぶつけるというより、少し膨らむ様なアクセントを連想すると良いのかも知れません。


 たった二音、されど二音。この様に作曲家の意図を考えながら音に奏でる事、何よりも気持ちが大切なのだと思います。

 
 
 

Comments


Copyright(C)2019 Ensemble"Eroica"
bottom of page